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言葉の面白さを教えてくれた吉川英治の「三国志」が青春の一冊

特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
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学生時代に読んだ本を思い出せと言われると

これが意外と思い出せない。

 

読んでいた当初は面白かったはずなのに

これならば、本当に自分の身になっていたのかと

自分の読書力のようなものに打ちひしがれる。

 

そんななか、私が今でも忘れられない一冊がある。

 

吉川英治著「三国志」だ。(一冊じゃない)

 

 

青春の一冊

三国志との思い出

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僕が、吉川英治の「三国志」と出会ったのは小学6年生だった。

 

当時、本をあまり読まなかった少年だった僕は

祖父母から本をプレゼントされた。

 

リンカーンの伝記だった。

 

アメリカに縁もゆかりもない祖父母が

何故、奴隷解放の父の伝記を渡してきたのかいまだに謎は解けてはいないが

その本を読んでいる自分は好きだった。

 

何故なら、「リンカーンの伝記を読んでいる」と親戚に触れ回ると

もれなくほめられたからだ。

 

僕は、調子に乗った。

もっと褒められたいと思った。

 

そこで出会ったのが、「三国志」だった。

 

当時は、ゲーム「三国無双」のヒットで空前の三国志ブーム。

小学生たちは競って武将の名前を覚え、事件を覚え、

皆の前で披露しては、誇らしげだった。

 

僕も、三国無双にはまっていたよくいる小学生であった。

 

そんな時期にあって、私の興味は本の「三国志」に向いた。

三国志は面白そうだし、原典(原典ではない)を当たればもっと詳しくなれるという気持ちと

本を読むと褒められる、三国志はすごく難しそうだし長い。これはかなり褒められる。という気持ちが

うまいこと重なって、私は数ある本の中でも

難しそうで、表紙にとても高級感のある吉川英治の「三国志」を読むことに決めたのだった。

 

吉川英治の「三国志」が教えてくれたこと

本のレベルが一気に上がった。

 

それまで、小学生低学年向けの伝記シリーズを読んでいたのに

急によくわからない言葉が飛び交う歴史小説を手にしたのだから訳がわからないのも当然のことだった。

 

それでも、僕の目論見は外れていなかった。

周りの小学生より、三国志に詳しくなった。

勝ったようでうれしかった。

 

次は三国志を読んでいると大人たちに言うと、皆これまで以上に褒めてくれた。

僕は得意になった。

 

そんな調子に乗った小学生に「三国志」はとてもたくさんのことを教えてくれた。

 

「言葉」だ。

 

読み始めのころは、意味の分からない言葉も多く

ゲームで知っていた知識と、何となくの文章の流れで意味を取っていた言葉たち。

まるで、外国語を読むときのような作業だ。

 

それが、いつしか新たな「調子乗り」を誘発した。

 

「難しい言葉を使いこなせたらかっこいいんじゃないか」

 

僕は、必死になって意味の分からない言葉を辞書で引きまくった。

 

引いては使えそうな言葉を日常生活で織り交ぜるようにした。

 

たまに自分でもよくわからなくなったし、

何より相手もよくわかっていなかった。

 

それでも、とても気持ちが良かった。

 

小学生特有の優越感が、僕を言葉にのめりこませたのだった。

 

三国志は子どものための本

そういう意味で三国志は子どものための本だと思う。

 

とても痛快で面白いだけではなく、

子どもたちが知らない言葉にのめりこむ時間を作ってくれる気がするからだ。

 

 そんな言葉を好きにさせてくれた

吉川英治の「三国志」は

僕にとって、間違いなく青春の一冊だった。

 

 

 

ってな感じで。