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早稲田生の心にワセメシを 第1回ワセメシ論「武道家」

早稲田大学の近辺にあるグルメの数々

早稲田生からは「ワセメシ」と呼ばれて愛されています。

 

一人一人にお気に入りの店があり、

一人一人がそれぞれのお店に対して「ワセメシ論」を持っているのです。

 

今回は、卒業生の私が私の「ワセメシ論」を語りながら

その個性あふれるお店の数々をご紹介していきたいと思います。

 

 

第1回ワセメシ論「武道家」

味の濃さ無限大 究極家系ラーメン

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私が、一番にご紹介したいのは早稲田駅から徒歩5秒

横浜家系ラーメンのお店「武道家」でございます。

 

武道家ラーメン / 早稲田駅(メトロ)早稲田駅(都電)若松河田駅
昼総合点★★★★ 4.5

 

家系ラーメンといえば、とんこつ醤油のラーメンで

ドロドロしたスープの元々から味が濃いことで有名なラーメンですね。

 

今回、ご紹介するこちらの「武道家」は

ただでさえ味の濃い家系ラーメンを、極限まで味を濃くしたようなラーメンなのです。

 

こちらのラーメンの一般的な食べ方は、

普通のラーメンとライス食べ放題を注文し、

ラーメンライスという主食オン主食で楽しむスタイルでございます。

 

スープの濃さは、ライスと一緒に楽しむことを想定された設定で、

スープとともに流し込む固めのライスは絶品。

 

味の濃さ・麺の固さ・油の多さは

やわめ・普通・固め

うすめ・普通・濃いめ

少なめ・普通・多め

から選ぶことが出来る。

 

ご飯のお供のおしんこや卓上の調味料の面々も個性的で

ラーメンにもご飯にも合わせることが出来る楽しさ満点のお店でもあります。

 

「っせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい」

の雄叫びとともに店に迎え入れられたり、

時間帯によっては、肉の細切れなども卓上に置かれていたりして

サービスも文句なしのお店だ。

 

出会い

ここまでは、普通の食レポと何ら変わりないが

ここからは、私が持つ「武道家」論を語っていきたいと思う。

 

出会いは、上京後すぐだった。

いつでも長蛇の列ができている「武道家」にはすぐに目が行った。

この店に絶対行くんだと決めてから、行くまでにはそんなに時間はかからなかった。

 

東京の行列ラーメン店を訪れるという経験も初めてで

行列という味の保証に心が躍った。

 

ほどなくして自分の番になり、地元では一度も浴びたことのないような

「っすうううううううううううううううううう」

ほとんど「す」としか言っていない雄叫びに気圧されながらも

食の探究の前には、何も目に入っていない状態であった。

 

食券を渡して、初めてのお店だから全て普通で注文してラーメンを待つ。

この時、まだライスをつけるという文化のない国から来た私はラーメンだけを頼むにとどまっていることも時代の流れを感じさせる。

 

そして、出てきたラーメンを見て始めに思ったことは

「見たことのない色をしている」というものだった。

 

そこそこのラーメン後進国兵庫県に住んでいた私は、

塩、しょうゆ、とんこつ、味噌

この王道パターンしか味わったことがなかった。

 

そんな私の未知との遭遇

心が高鳴るのを押さえ、れんげにスープをよそい

麺とスープを一緒に胃に流し込んだ。

 

落ちる稲妻、走る衝撃。

この世の物とは思えない味の濃さ。

喉に絡みつくスープ。

胃にいちいちたまる重さ。

 

全てがその当時の軟弱な大学1年生には荷が重かった。

 

「これが東京の洗礼か」

 

人間が食うものとはとても思えない味の濃さに絶望感を抱きつつ

出されたものは全て食べるという義務感から全て食べ終わり、そそくさと店を出た。

 

しばらくは出てすぐのガードレールに座りこみ、動くことが出来なかった。

 

私は、この町で生きていくことに不安を覚えたのだ。

 

ヒストリー

私と武道家との出会いは鮮烈で、これまでこれほどの味の暴力を受けたことがなかった少年には衝撃でしかなかったわけだ。

 

しかし、そんな少年が武道家を食べられるようになり、好きになっていく

好きになって、慣れていって、ちょっと離れて、また好きになる

 

私にはそんなヒストリーがある

いや、誰もが通る道と行っても過言ではない。

 

武道家好きの早稲田生がたどりがちな武道家遍歴をここで紹介していきたい。

 

1.出会い

出会いは、誰しもが衝撃を受ける。

二度と行かないと思う人も少なくないのだ。

 

2.再開

そして、それからの再開はそう遅くない。

やっぱりなんだか気になってまた来てしまう。

 

この後は、ラーメン二郎をはまる経緯とほぼ同じだ。

 

二度と行かないと思いつつも、なぜか忘れられずにまた食べてみたくなる。

 

2回目はまだ舌が受け付けない。

 

そこからまた1か月ほど経った後にまた行きたくなる。

 

3回目まで来るともうおしまいだ。

実はおいしいことに、そして、嫌いじゃないことに気づいている自分がいる。

 

早稲田生は、おそらく1年生の秋ごろまでには武道家を好きになる。

 

3.大好物時代

ここから、2年生の中盤ごろまでは武道家を手放せなくなる。

行く人は週に1回のペースで行ってしまうほどに成長する。

 

徐々に味も濃くなっていく。

 

初めは普通・普通・普通だったのが

いつしか固め・濃いめ・普通になり

最後は固め・濃いめ・多めにたどり着くのだ。

 

そして、これが至高だとしばらくは思い込んでしまう。

 

4.老い

次に来るのが、老いだ。

3年生にも突入すると、多くの武道家愛好家の口から

もう武道家にかつての頻度で行けるほどの元気がなくなったという言葉が飛び出す。

 

そう、あの味にしばらくついて行けなくなる時期が突然に訪れるのだ。

 

「月に1度で十分だよね」

「流石にかたこい(固め・濃いめ)もきついわ」

「結局普通のラーメンがいいよね」

 

などという弱気にも似た言葉をよく聞くようになる時期が3年生だ。

 

これは本当に多くの武道家愛好家が通る道だ。

 

そして、ここでなんとなく自分の本当の好みのアレンジにたどり着く

私はこの時から1年間くらいは油多めはできず

固め・濃いめで過ごしていた

 

5.リバイバル

そして、4年も終わろうとする時期

大学を去る直前になって、武道家にもっといっておきたいとリバイバルするものが増えるのだ。

 

また味のお好みも、固め・濃いめ・多めに試験的に戻すものも多く、

そこで、昨年度1年間に何となく感じていた味への違和感が

固め・濃いめ・多めに戻すことによって解消されたという意見もよく聞いたりするのがこの時期だ。

 

そして、この後は社会人になって1年に1回食べられたら良いくらいまで食べられなくなってしまう。

 

そうなると、人は最高潮を味わうために固め・濃いめ・多めを頼むようになって

今後、その選択肢が増えるという寸法なわけだ。

 

みんな持っている自分流の一番食べやすい食べ方

同じラーメンにもかかわらず、これほどまでに食べ方にバリエーションが出るのも珍しい。

 

私は、必ずラーメンが提供されたら

まず具を全て片づける。

 

そのあとは、麺がなくなるまで米と一緒に食べる時間が続く。

この時に絶対にれんげを出してはいけない。

スムーズな食運営が滞るからだ。

 

麺を全て片づけ、スープしかない綺麗な状態を作り出せたら

ここで初めてレンゲが登場する。

レンゲにご飯を乗せ、ごはんの下1mm位をスープで軽く浸す。

 

これが私流の武道家の一番おいしい食べ方だ。

 

このほかにも、ごはんにスープをかける派どんぶりにご飯をぶちまける派など

食べる過程、ごはんの扱い、調味料の投入タイミングに至るまで

人によって事細かに好みが分かれるのもこの武道家の不思議なところだ。

 

私は最初にご飯が提供された時点で、辛みそをかならずご飯に乗せる。

後半になったらおろしにんにくはご飯の隅にたらす。

 

こういう自分ルールが必ず誰しもが持っているのだ。

 

それほどまでに武道家は探究し甲斐がある。

 

ご飯に対する思い

皆、武道家のご飯に対してそれぞれの思いがある。

 

私にとっては、ごはんは「レンゲ」なのだ。

 

だから、麺がなくなるまでレンゲは投入しない。

ご飯というレンゲがあるから一向に必要ないのだ。

麺に絡みついた濃いめのスープを米という真っ白なレンゲで切る。

 

米というレンゲは、武道家のスープを味わうのに一番最適な道具なのだ。

 

だから、私にとってスープを味わうためのご飯は「レンゲ」なのだ。

 

しかし、私の友人にとってご飯は「薬味」なのだ。

 

ラーメンをよりよく楽しむためのアクセント的な存在。

それがご飯。

固めのご飯のつぶつぶ感。

スープとご飯と麺のコラボレーション。

 

彼らにとって、武道家のご飯は「薬味」なのだ。

 

そんな思いを、早稲田生は一人一人持っているはずなのだ。

 

修業的側面

出会いの項でもお話ししたが

かつて私の舌は武道家を受け付けなかった。

 

しかし、慣れるのだ。

 

そして、私の不幸は初めての家系が武道家だったことなのだ。

 

他の家系を食べて、薄いとしか感じたことがない。

これは不幸だ。

どの家系で食べても、もれなく物足りない。

 

「味が濃いのが自慢です」

と書かれた店に入って

「なんだこれ、薄味だな」

という感想を持つまでに育て上げられる。

 

ここから、私は人は鍛えれば強くなれるのだし

もっと上も目指せるのだと気付かされたのだ。

 

ワセメシは心のふるさと

今回は、早稲田の猛者ラーメン屋「武道家」を特集した。

 

このように早稲田生はお気に入りのワセメシに

ワセメシ論をもって、生活をしているのだ。

 

このワセメシ論を読んで、ワセメシの魅力に気づき

ワセメシを愛してくれる人が少しでも増えてくれたらと私は思う。

 

ワセメシを好きになるのは時間が必要なのだが・・・

 

 

っていう感じで。